02時間とお金

職場の合理的配慮には、どんな例がある?

会社の採用ページでいちばん多いのは、面談や相談員などの相談の体制です。配慮を具体的に書いた会社のおよそ8割(125社)が書いていました。

国の合理的配慮指針の具体例と、国の調査で多い配慮もあわせて並べます。学校の合理的配慮は扱っていません。

更新日 2026.10.26 データの時点 採用ページ調査 2026年10月17日・20日確認、障害者雇用実態調査 令和5年度(2023年度)
編集・監修 徳永崇志(株式会社イチドキリ 代表取締役。就労継続支援B型事業所 ぽちぽちの道を運営)

01会社が書いている配慮

会社は、採用ページにどんな配慮を書いている?

相談の体制がいちばん多く、実習で試せること、職場定着の支援が続きます。

図1 採用ページに書いている配慮の種類(配慮を具体的に書いた161社)
相談の体制125社実習で試せる80社職場定着の支援79社休みと通院62社手順の工夫51社勤務時間の調整43社設備の整備43社伝え方の工夫21社050100161社
相談の体制
定期的な面談、相談員や支援員を置くなど
実習で試せる
職場実習やトライアル雇用で、働く前や働きはじめに試せる
職場定着の支援
ジョブコーチや支援機関と連携して、続けられるよう支える
休みと通院
休みを取りやすくする、通院や体調に合わせる
手順の工夫
手順書を用意する、作業を見える形にする
勤務時間の調整
短い時間から始める、勤務の時間や日数を調整する
設備の整備
スロープや手すり、机の高さなど職場を整える
伝え方の工夫
手話や筆談、チャットなどで伝える

母数は、東京都と埼玉県の会社のうち、採用ページで配慮を具体的に書いていた会社です。1社がいくつもの配慮を書いているので、足すと母数をこえます。「そのほか」に当たる60社は図に入れていません。

採用ページ調査の集計 特例子会社の配慮

出典: 採用ページ調査(出典1)。

02国の指針の具体例

国の指針には、どんな具体例がある?

国の合理的配慮指針は、障害の区分と場面ごとに、指針が「多くの事業主が対応できる」とする配慮の例を挙げています。

どの障害区分にも挙がっている例(採用後)

  • 仕事の指導や相談の担当者を決める
  • 出退勤の時刻・休暇・休憩を、通院や体調に合わせる
  • 本人のプライバシーに配慮したうえで、周りの人に障害の内容や必要な配慮を説明する
合理的配慮指針の障害区分ごとの具体例
障害区分募集・採用のとき採用のあと
視覚障害
  • 募集の内容を音声などで伝える
  • 採用試験を点字や音声で行う、試験の時間を延ばす
  • 拡大文字や音声ソフトで仕事ができるようにする
  • 机の配置や危ない場所を前もって確かめる
  • 通路に物を置かず、移動の負担を減らす
聴覚・言語障害
  • 面接に支援機関の職員などが同席できる
  • 面接を筆談などで行う
  • 仕事の指示や連絡に、筆談やメールを使う
  • 危険を目で見て分かるようにする
肢体不自由
  • 面接で移動が少なくて済むようにする
  • 通路に物を置かず、移動の負担を減らす
  • 机の高さを調節するなど、作業できるよう工夫する
  • スロープや手すりを付ける
  • 体温を調整しやすい服装を認める
内部障害
  • 面接の時間を体調に合わせる
  • 負担の程度に合わせて、仕事の量を調整する
知的障害
  • 面接に支援機関の職員などが同席できる
  • 慣れるのに合わせて、仕事の量を少しずつ増やす
  • 図を使ったマニュアルを作り、指示は一つずつ出す
精神障害
  • 面接に支援機関の職員などが同席できる
  • 仕事の優先順位や目標をはっきりさせ、指示を一つずつ出す
  • 手順を分かりやすく書いたマニュアルを作る
  • なるべく静かな場所で休憩できるようにする
  • 本人の様子を見ながら仕事の量を調整する
発達障害
  • 面接に支援機関の職員などが同席できる
  • 面接や試験で文字でやりとりし、試験の時間を延ばす
  • 指示や予定をはっきりさせ、指示を一つずつ出す
  • 図を使った手順のマニュアルを作る
  • 感覚過敏をやわらげるため、サングラスや耳栓を認める
難病による障害
  • 面接の時間を体調に合わせる
  • 面接に支援機関の職員などが同席できる
  • 負担の程度に合わせて、仕事の量を調整する
高次脳機能障害
  • 面接に支援機関の職員などが同席できる
  • 仕事の内容をメモにし、指示を一つずつ出す
  • 写真や図で作業の手順を示す
  • 負担の程度に合わせて、仕事の量を調整する

指針は、これらはあくまで例で、すべての会社がするものではないとしています。ここにない配慮も、合理的配慮に当たることがあります。

出典: 厚生労働省『合理的配慮指針(平成27年厚生労働省告示第117号)』の別表(出典2)。告示の文を短くまとめました。

03困りごとから探す

困りごとから探すと、どんな配慮がある?

指針の例を、困りごとの側から並べかえました。障害の区分にかかわらず、合う配慮を話し合えます。

困りごとと配慮の例
困りごと配慮の例指針で挙がっている区分
指示を覚えにくい、一度にたくさん言われると分からない指示を一つずつ出す。図や写真を使った手順のマニュアルを作る。仕事の内容をメモにする。知的・精神・発達・高次脳機能
疲れやすい、体調に波がある仕事の量を調整する。出退勤の時刻や休憩、休暇を、通院や体調に合わせる。仕事の量は内部・精神・難病・高次脳機能。出退勤と休憩はすべての区分
音や光がつらいサングラスや耳栓を認める。なるべく静かな場所で休憩できるようにする。発達・精神
聞こえにくい、話しにくい指示や連絡に筆談やメールを使う。危険を目で見て分かるようにする。聴覚・言語
見えにくい拡大文字や音声ソフトを使えるようにする。通路に物を置かない。視覚
移動や姿勢がつらい机の高さを調節する。スロープや手すりを付ける。通路に物を置かない。肢体不自由・視覚
面接や試験でのやりとりが心配面接に支援機関の職員などの同席を認める。筆談や文字でやりとりする。試験の時間を延ばす。同席は聴覚・言語、知的、精神、発達、難病、高次脳機能。筆談は聴覚・言語。文字のやりとりと試験時間は発達ほか

出典: 厚生労働省『合理的配慮指針(平成27年厚生労働省告示第117号)』の別表(出典2)を、編集部が困りごとの順に並べかえました。

04障害の種類ごとの上位

障害の種類ごとに、会社が多くしている配慮は?

勤務時間の配慮は、どの種類でも上位3つに入っています。

障害の種類ごとの配慮の上位
障害の種類多い配慮(上位3つ)
発達障害
  1. 休暇を取りやすくし、勤務中の休憩を認めるなど、休養への配慮(61.2%)
  2. 短い時間の勤務など、勤務時間の配慮(50.9%)
  3. 通院や服薬の管理など、雇用管理での配慮(47.9%)
精神障害
  1. 短い時間の勤務など、勤務時間の配慮(54.3%)
  2. 休暇を取りやすくし、勤務中の休憩を認めるなど、休養への配慮(50.9%)
  3. 通院や服薬の管理など、雇用管理での配慮(49.2%)
知的障害
  1. 力を発揮できる仕事への配置(51.1%)
  2. 短い時間の勤務など、勤務時間の配慮(50.9%)
  3. 仕事のやり方の、わかりやすい指示(50.3%)
身体障害
  1. 休暇を取りやすくし、勤務中の休憩を認めるなど、休養への配慮(40.2%)
  2. 通院や服薬の管理など、雇用管理での配慮(38.3%)
  3. 短い時間の勤務など、勤務時間の配慮(37.9%)

割合は、その障害のある人を雇い、配慮をしていると答えた事業所の中での値です(全国・令和5年度(2023年度))。

出典: 厚生労働省『令和5年度 障害者雇用実態調査』結果報告書の雇用している障害者への配慮事項(出典3)。

05配慮の決まり方

配慮は、どうやって決まる?

本人の申し出や会社の確認から始まり、話し合って決めます。会社は、決めた配慮の内容を本人に伝えます。

  1. 1 支障になっていることを伝える

    募集や採用のときは、本人が会社に申し出ます。希望する配慮を具体的に言えなくても、困っている事情を伝えれば足ります。準備に時間がかかることがあるので、面接の日より前に伝えます。自分の意向をうまく伝えにくいときは、支援機関の職員などに手伝ってもらうこともできます。

  2. 2 採用のあとは、会社も確かめる

    会社は、職場で支障になっている事情がないかを本人に確かめます。必要に応じて、定期的に確かめます。本人から先に申し出ることもできます。会社が障害を知らないと確かめられないので、伝えるかどうかは本人が選べます。

  3. 3 話し合って決める

    会社は本人と話し合い、本人の意向を十分に尊重して、どの配慮をするかを決めます。本人が具体的な配慮を言えないときは、会社ができる配慮を示して話し合います。合う配慮がいくつかあるときは、会社が用意しやすいほうを選ぶこともあります。決めた内容は本人に伝え、準備に時間がかかるときはそのことも伝えます。

出典: 厚生労働省『合理的配慮指針(平成27年厚生労働省告示第117号)』の「合理的配慮の手続」(出典2)、『障害者の雇用の促進等に関する法律 第36条の2〜第36条の4(合理的配慮の提供・相談体制)』(出典4)。

06どこまで頼める?

配慮は、どこまで頼める?

会社にとって「過重な負担」になる配慮は、義務から外れます。そのときも、負担にならない範囲の配慮を話し合います。

過重な負担かどうかは、指針が挙げる6つの要素を総合的に考え、配慮ごとに会社が判断します。

  • 事業活動への影響の程度
  • 実現の難しさ(立地や設備、人の確保など)
  • 費用や負担の程度
  • 企業の規模
  • 企業の財務の状況
  • 公的な支援を使えるか(使える支援があれば、使う前提で判断する)

配慮の対象は、仕事をするために要る配慮です。日常生活に使う眼鏡や車いすを会社が用意することは、求められていません。

会社は、希望の配慮が過重な負担に当たると判断したときは、そのことを本人に伝えます。本人が求めれば、理由も説明します。

合理的配慮は「わがまま」?線はどこにある?

配慮を申し出ることは、わがままではありません。障害者雇用促進法は、障害のある人が働くうえで支障になっている事情を改善する配慮を、会社の義務としています(過重な負担になる場合を除きます)。募集や採用のときの配慮は、本人の申し出から始まると決まっています。

一方で、指針は、合理的配慮は本人と会社の「相互理解の中で」用意されるものとしています。線になるのは、次の点です。

  • 対象は、仕事をするために要る配慮です。日常生活に使う眼鏡や車いすは、会社が用意する配慮に入りません。
  • 会社にとって過重な負担になる配慮は、義務から外れます。そのときも、会社は本人と話し合い、負担にならない範囲の配慮をします。
  • 配慮のやり方がいくつかあるときは、会社は本人の意向を十分に尊重したうえで、より用意しやすいやり方を選べます。希望どおりのやり方になるとは限りません。
  • 指針は、会社や同じ職場で働く人が、障害の特性について正しい知識を持ち、理解を深めることが大切だとしています。

頼むときは、仕事のどの場面で何に困っているかと、どう変わると働きやすいかを、具体的に伝えます。決め方の流れは05、場面ごとの例は02にあります。

出典: 厚生労働省『合理的配慮指針(平成27年厚生労働省告示第117号)』の「基本的な考え方」「合理的配慮の内容」「過重な負担」(出典2)、『障害者の雇用の促進等に関する法律 第36条の2〜第36条の4(合理的配慮の提供・相談体制)』(出典4)。

07よくある質問

よく聞かれることは?

わがままではないか、手帳がない場合、配慮をしてもらえないときの相談先などに答えます。

Q合理的配慮を頼むのは、わがまま?

職場の合理的配慮は、障害者雇用促進法で会社に義務づけられています(過重な負担になる場合を除きます)。障害のある人が働くうえで支障になっている事情を、会社と話し合って改善するものです。ただし、希望どおりの配慮になるとは限りません。配慮のやり方がいくつかあるときは、会社は本人の意向を十分に尊重したうえで、より用意しやすいやり方を選べます。仕事のための配慮が対象で、日常生活に使う物を会社が用意することは求められていません。 わがままとの線は、どこにある?

Q障害者手帳がないと、配慮は受けられない?

手帳がなくても、対象になることがあります。厚生労働省は、手帳の有無や週の所定労働時間で対象を限っていないと説明しています。障害のため、長期にわたって仕事に相当の制限を受けている人が対象です。会社は、医師の診断書などで確かめることがあります。

Q配慮をしてもらえないときは、どこに相談する?

働いている人は、まず会社の相談窓口です。会社は、配慮の相談を受ける窓口を決めておく決まりです。応募の段階なら、採用の担当者に伝えます。解決しないときは、都道府県労働局に助言や指導を求められます。採用されたあとの紛争なら、調停も申請できます。

Q学校や大学の合理的配慮も、このページの例と同じ?

このページは、職場の合理的配慮だけを扱っています。学校や大学の配慮は、別の法律や指針で決まっています。

出典: 『障害者の雇用の促進等に関する法律 第36条の2〜第36条の4(合理的配慮の提供・相談体制)』(出典4)、厚生労働省『障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A【第二版】』(出典5)、厚生労働省『合理的配慮指針(平成27年厚生労働省告示第117号)』の「相談体制の整備等」(出典2)、『障害者の雇用の促進等に関する法律 第74条の6・第74条の7(紛争の解決の援助・調停)』(出典6)。

08出典と確認日

このページの出典と確認日

会社の採用ページの調査、国の指針と法令、国の調査から書いています。

更新履歴 2026.10.26 公開しました。指針や調査が新しくなったら、確かめ直して直します。記載の誤りは訂正窓口へお知らせください。

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